[22]Boléro:origine et magie ①
凍てつき静まり返った湖面に現れて
氷の硬さを確かめておもむろに始めるコンパルソリー。
やがて旋回し、跳躍し、滑りから踊りへ熱を帯びていく。
トレースは呪術でもかけていそうな対称性図形です。
詳細を見るのでトレースを分割します。
(構成【0】Ⅰa-Ⅰb)
はじめはLFOブラケット・RBIブラケットで8サークル(黄緑のライン)。
中央へ戻ると立ち止まって右脚でS字を描くような動きをします(深緑のライン)。
次はリンク縦に8の字を2回(黄色のライン)。
LFOでスイングロール、チェンジエッジしてLFI、足を踏みかえて
RFOでスイングロール、チェンジエッジしてRFIで中央へ戻る。
LFIで反対側の8の字へ出て、チェンジエッジしてLFOでクロスを入れ、
RFIでスイングロール、チェンジエッジしてRFO。対称的な動きです。
中央へ戻ると両腕を下に伸ばし、足踏みしながら回って、手を裏表しながら全身で律動する。
そして、氷に慣れてきた男の動きは一気に複雑になります。
(構成【1】Ⅱa-Ⅱb )
RFIブラケットから垂直跳び、Lツイズル、ベスティスクワットイーグル、
LFOループ、RFIスリー、両足ひょうたんからLBIスリー、
Rツイズル、RFIブラケット、左トゥでRBOピボット、LFアラベスクで中央へ。
2回目はLFIから逆足で対称に繰り返します。
中央へ戻ってくると、また手を裏表させる動きをしますが
今度は腕を上に曲げて、片足ターンで6弁の花を描くように回ります。
* ∞ * ∞ * ∞ * ∞ *
8サークルはフィギュアスケートの基礎練習を象徴するような軌跡ですが、
無限大(∞)と同じ形であり、メビウスの輪とみなすこともできる深遠な図形。
私はブラケットのターンの軌跡が葉先のようで、双葉を連想しました。
双葉から四つ葉へ、根を張り枝分かれして蔓を巻き、花を咲かせるイメージ。
植物も幾何学模様のモチーフですから。
初見でも垂直跳びやイーグルは繰り返しているなと思いましたが、
まったく対称に、しかも足をきれいに左右逆でなぞっているのに気づいたときは
技術とこだわりの秀逸さに、打たれるような感動を覚えました。
対称性の美しさを基本から追求したような振付、ほんとうにすばらしいです。