[22]Boléro:origine et magie (楽句構成)
ボレロは、楽句の対称的な反復が特徴で、曲全体が壮大なクレシェンドとなっています。
Aメロ(メジャー)主題→応答、
Bメロ(マイナー)対主題→対応答、という構成が基本です。
約15分におよぶ原曲の構成と、町田さんの編曲を解析してみました。
使われたのは上下の四角い黒枠の部分のようです。
・楽器編成は ボレロ (ラヴェル) - Wikipedia を参照
・ボレロを「平らになったフーガ」として0から18の楽句に分解する構造は、
レヴィ・ストロース『神話論理Ⅳ-2裸の人』(みすず書房、訳・吉田禎吾ほか)を参照
原曲ではAメロ(メジャー、左のピンクの部分)と、
Bメロ(マイナー、右の青緑の部分)がそれぞれ2回ずつ繰り返され、
最後だけ集約するように1回ずつ演奏され、終結へ向かいます。
編曲では、1回目のBメロは繰り返しがありません。そして思い切って中盤をとばしています。
クレシェンドを演奏するときに私が意識しているのは、音量をすぐに上げないこと。
たとえば4拍子の1小節にかかるクレシェンドなら、前半2拍はピアニシモのままこらえておいて、
後半2拍で一気にフォルテシモまでもっていくほうが盛り上がりが明確で効果的です。
ボレロ原曲でも前半はソロが続き、かなり抑えた音量です。
町田さんの編曲構成だと一気に後半に跳びますが、もし均一に大きくなるクレシェンドだったら
音量は【】の楽句番号に準じて1・2→12と極端に上がってしまいます。
実際は均一な音量比ではないので、1・2ていどのピアニシモから跳んで3か4くらい、
そこから10まで上がって終わる感覚でしょうか。
クレシェンド中抜きの編曲だと違和感がありますが、そこまでではなく程よくしっかり音量が上がります。
1回目の【0】から【2】まではコンパルソリー的な技術向上を感情を抑えて静かに示し、
2回目でAメロに戻ってきたら音量を上げて展開をはっきりさせ、表情や呼吸を強調した振付にすることで
【13】からスケートの快楽へ目覚める様子をわかりやすく見せていると思います。
ボレロの対称性についてもう少し。
Aメロの主題と応答は対称的、Aメロの主題とBメロの対主題も対称的。
しかしAメロ応答とBメロ対応答は必ずしも対称ではない。ズレがあります。
よって、Aメロ主題とBメロ対応答は、対偶ではありません。
正のAメロに対してBメロは反転するもの。とりわけBメロ対応答は転回です。
もしBメロも整然とした反復であればまったく同じAメロに戻り、
音楽は平面的な円として完結し、ひたすら無限ループすることになります。
しかしボレロのBメロは異変を起こして拡張するので、元のAメロからずれを起こして重なります。
非対称な歪みが音楽を広げていくのです。
このAメロの対称性とBメロの異質性は、町田さんの振付にも見ることができます。
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2018年4月28日、プリンスアイスワールドにて初見。
振付やトレースについては別にまとめます。