旋回と跳躍と

フィギュアスケートに関してあれこれ思い巡らせたことの記録です。過去に出したものもまとめているため、時系列は歪んでいます。

[21]Swan Lake:Siegfried and His Destiny

バレエの舞台をなぞった演劇的な作品という印象ですが、ステップがやたら華やかなのも特徴。

S席から見ていたので、何度もリンクいっぱいつかって踊っているのはよくわかりました。

なにしろ伝統的なステップの3様式を入れたのがこだわりのようなので、

トレースではそれを探してみました。

 

第1幕のサーキュラーステップ

内に外に入り込んだ軌道は、円形というより花のようです。

 

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第3幕のサーペンタインステップ

細かく追ったのですが、⑦あたりはよく見えませんでした。

⑧のダブルカウンターはわりと珍しいのかな、フリーレッグを雄弁につかっていて素敵です。

 

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第3幕、迫力のストレートラインステップ。白い光を裂くように、一気に駆ける姿の神々しいこと。

最後で跳んだまま姿が消えちゃう演出、さすがです。

 

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第2幕からもう1つ。3様式の軌跡にはっきり当てはまるわけではないのですが、

じゅうぶんステップシークエンスの長さがとれます。

 

 

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 こんなにたくさんステップ踏んで、リンク駆け巡ってるんですねぇ。

技術と体力に感心し、恐れ入るばかりです。

 

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2017年10月7日、カーニバルオンアイスにて初見。

披露するまで作品の内容を明かさない主義のひとなのに

パンフレットのインタビューにあっさり白鳥の湖と記載されていて、当惑しました。

この作品については、事前に読んでおいてほしかったのでしょうか。

私はこの超有名作品をぼんやりとしか知らなかったのですが、

振付や舞台設定に演劇要素が強く、短い時間に凝縮された展開なので、

あらすじをわかっていたほうが初見でより楽しめたかもしれません。

 

現地で見たときは第1幕と第2幕のあいだが少し長いように感じて

一人舞台だし、また長い作品だったら小休憩しなきゃね、なんて思ったのですが

放送を見るとアナウンサーにより次の幕の状況説明が入るので、

そのための時間を意識的にとっていたのかもしれません。

アナウンサーの実況や感想ではなく、台本として用意したものを語ってもらったようですし

どうせなら現地でも流してほしかったくらいです。

 

広い広いさいたまスーパーアリーナの、S席から見下ろしての鑑賞でしたが、

観客の後ろ姿がつらなってまるで木々の影のようで、建物の構造を楽しめる舞台になっていました。

群舞を俯瞰で見るのは好きなのですが、たまアリほど大きい会場になってしまうと

高いところからソロを見るのはちょっと物足りないです。

でも、スワンレイクは、箱庭で繰り広げられている物語を見ているような独特な感覚が生まれて、

今までにない面白さでした。

暗い森のなかに浮かび上がる広大な宮殿、そのなかで踊る王子はなんとも儚い存在で、

女王に逆らえず、悪魔の罠にはまり、(・・・といったストーリーは実はよくわかっていなかったのですが)

見ているだけでも、王子の孤独と小ささが強調されて伝わりました。

そして、第2幕になったとたん宮殿の柱として屹立した白い光も、

第3幕の、客席を照らして悪魔に見立てた赤い照明も、一瞬で舞台が激変する大胆な仕掛け。

アイスショーでこんなことできるのか!とびっくりしました。

あの会場で、意思疎通できるスタッフが揃ってこその作品なのでしょうけれど、

一度きりにするのはもったいない演出でした。