[19]Ave Maria
トランペットのロングトーンを活かしたリンク大横断アラベスクが見どころ。
ジャンプを跳ばないという、主張の強さが横たわる作品でもあります。
そのせいか、スケーティングや音楽との調和を意識して見てしまいます。
トレースを描いてみたのはこの作品からだったと思います。
ABCは音名です。耳コピ譜はあえて小節線を消していますよ。
わりと短い曲なので1枚に収めましたが、3つに分けて作ってあります。
描画ソフトを初めて使ったのですが、おかげでレイヤーの便利さが大変よくわかりました。
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2016年10月1日、ジャパンオープンのゲストとして一回限りの公演。
新作への期待と緊張に満ちた、独特で異様な雰囲気のなか。
音楽が聴こえてきてもなかなか姿を現さず、出てきたと思ったら音源が拍手つきという
厳かなのか調子のってるのかわからない、たいそう勿体つけた登場っぷりで
会場がザワザワと笑いに包まれた衝撃の作品。
今 思い出しても、たまアリに充満したどよめきと、空気の揺れが蘇ってきます。
プリンスアイスワールドのオープニングでお披露目してきた黒い透け透け衣裳を、
まさかアヴェマリアで使うなんて。まったく予想外の組み合わせでした。
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このプログラムで最も印象的な、トランペットのロングトーンにあわせたリンク大横断について。
トレース3枚目(紺ラインの図)、中央右から左へのA音で伸びた直線がそれです。
バレエでいうアラベスクのポーズをとったままリンクの端から端まで一直線に進むのですが、
ポーズ(静止姿勢)のまま動くという、スケートでこそ実施できる技となっています。
誤解されているのをよく見ますが、このポーズは「スパイラル」ではありません。
スパイラルという技の特徴は
・滑走脚ではないほうの脚を、腰より高く上げる(脚をあげるのは身体の前でも後ろでも横でもよい)
・エッジにのって円弧を描いて滑る
というものです。
美しいスパイラルは、身体がしっかり伸び、勢いがあり、軌跡は内巻きの螺旋を描いていきます。
フィギュアスケートの軌跡は円が基本であり、スパイラルはその華と言えるような技です。
アヴェマリアのスパイラルは上のトレース2枚目(水色ラインの図)、右下にあるC音から助走が始まります。
中央をつっきってチェンジエッジしたG音から、左上方向をまわっているのが、左アウトエッジのスパイラルです。
ですが、このプログラム最大の見せ場でおこなっているのはスパイラルではないのです。
フリーレッグは美しく伸びていますが、腰の高さまでは上げられていません。そして、直進するのです。
音楽にあわせてスピードを抑制し、エッジにのってカーブを切るのではなくスーッと慣性で進む。
勢いのある円ではなく、あえての、静止姿勢による直線表現。
ここのトランペットはアタックからまっすぐ抜けるように吹いています。
ビブラートをきかせるでも強弱をつけるでもなくシンプルに伸ばしたロングトーンです。
ひと蹴りでその姿勢のまま直進するというのは、音のイメージをストレートに表現したものなのでしょう。
ですが、シングル種目では目玉となっているジャンプを排除したプログラムで見せ場としてもってきたのが、
フィギュアスケートのイメージに反発するような技、そしてフィギュアスケートでしかできない技だと考えると、音楽表現だけではない意図を感じます。
競技ルールで評価されるものを排しながら、そこに技術があり美があることを自信と誇りをもって見せつけてきた。
斬新で、なんとも野心的。拍手喝采せずにいられないプログラムです。